最初の6語

ここのところバタバタと各所に対応していたCQ誌の記事でしたが、ようやく脱稿してヒマができました。 今週末はちょっと先ですが、10月の全国盲ろう者大会の出展準備をすることにします。 なぜそんなに早くやるかというと、モールス符号を触感表示できるプリンタというものが無いからです。

何を作るかというと、「モールス符号 最初に覚える6語の「墨字-点字-打刻したモールス符号」の一覧表です。

さて「簡単な会話をモールスで」と前置きして、6~7つのことばを示すとしたら、あなたは何を選ぶでしょうか?

1. こんにちは(こんにちわ GA ーー・ ・ー)

2. ありがとう(ありがとー TU ー ・・ー)

3. さようなら(さよーなら ・・・ー・ー)

これぐらいはまあ順当なところでしょう。 残り3つは人により選ぶものは変わると思いますが、私は今回以下の3つを選びました。

4. わかりました(R ・ー・)

これは普通の電信の交信でもひんぱんに使います。 次は盲ろう者特有だと思います、それは

5. ちょっと待ってね(・ー・・・)

盲ろう者で「会話」ができる人は、お互いに手と手を合わせて「指点字」とか「触手話」でコミュニケーションを行っています。 ですから手と手を離してしまうと、電話の相手が無音になったときの「もしもし?」と同じ状態になるのですが、盲ろう者は「もしもし?」と問いかけることができません。 それで盲ろう者と接している間は、常に体のどこかに触れている必要があるのです。 しかし今回のように対面なり遠隔で(=ネットや無線を介して)交信する時は、触れていない=スタンバイ状態なわけで、なにかしら「これから手を離します」というサインを用意しておく必要があると考えました。 それが「・-・・・」です。

6. hi(笑い声 ・・・・ ・・)

なんの気なしに日常的に電信で使っているこの符号、考えてみると昔のひとはよく作ったな(必要だから作ったといえばそれまでですが)と感心します。 可笑しさの表現にとどまらず、肯定の強調、自虐などTPOや前後関係でいろんな使い方をしていますが、基本ポジティブな感情表現です。 なので最初に覚えてもらうには相応しいと思いました。

この6つを「墨字(活字)ー点字ー凹凸刻印によるモールス符号」をセットにして表せば出来上がりです。 台紙に100均のハガキ用紙を使い、文言をプリンタで印刷し、語句に対応する点字を透明テープに携帯点字器で刻印して貼り、モールス符号の部分は木工用ボンドで盛って描くわけです。

点字であれば点字プリンタというものがあります。 でもたいへん高価ですし、コンビニに行ってピッピで出力してくれるわけもありません。 いままでテープライターとか桧角棒とか果ては3doodleペンというのまで使ってみましたが、結局もっとも大量生産に向いていそうなのがこの「木工ボンドによる手書き」のようです。 紙の上に短点と長点を木工ボンドを絞り出し、太さが2mmぐらいの盛り上がった線や点を描いていきます。 乾くとやや収縮して割ときれいなかまぼこ形の断面に仕上がります。

木工ボンドは意外と尾を引くので、けっこう整った線分や点を描くのはコツが要ります。 留めや送りなど何だかお習字に近い感覚です。 こういう作業は集中力を要するので、やってるあいだ悩みや心配ごとを忘れさせてくれる、なかなか貴重な時間です。

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