そうは言っても・・・(その2)

「そうは言っても、真のバリアフリーを標榜するんなら、ふつうの人と同じようにアマチュア無線が始められる、ってのがゴールじゃないの?」

その通りです。 それを実現するための方策を少しまとめてみたいと思います。

一般的に「バリアフリー」は次の4つの側面があるとされています。(※1)

物理的バリアフリー: 受信音声出力に振動アダプターをつなげればモールスの触覚受信ができ、縦振れ電鍵を叩けば電信の電波を送信できるのはすでに説明したとおりで、8月17日の投稿のイラストにあるような感じのセッティングで、盲ろうの人でもアマチュア無線は楽しめそうな気がしています。 しかし、アマチュア無線機器の操作に関しては多くの問題が残ります。 特に最近の無線機はほぼ全てのツマミが平滑なタッチパネル化されてしまい、視覚での認識が不可欠になってしまいました。 リアルにどこどこのボタンを押したり、ツマミを回せばこうなる、ということが手探りでもできません。 スピーチボタンを押すと周波数を読み上げたりする対応がされるようにはなったものの、それ以前の問題だと思います。 MFJ社の93**シリーズとか、旧ミズホ通信のピコシリーズといった、オフバンドなしのダイヤル式電信シングルモード機が望まれます。

情報・文化のバリアフリー: アマチュア無線に限定して考えるならば、電信のもつ特性から「資格を取ってしまえばこのバリアはそれほどでもない」、裏を返せば、資格をとるまでの情報・文化のバリアは並大抵のものではないような気がします。 視覚障がい者では古くからアマチュア無線を趣味としている方は居り、かつて無線従事者がガチの国家試験だった時代は、点字での従事者試験が行われていました。 この間調べたら、今は日本無線協会が視覚障がい者向けには「口頭試問試験」を臨時で実施しているとのこと。 これでは盲ろう者はかやの外になってしまいます。 協会では3級臨時試験は盲ろう者向けの点字試験の実施への対応を(近々?)してくれそうで、それはたいへん有り難いことなのですが、視覚障がい者の試験では介助者は当事者を試験室に案内したあと退出しないといけない規定があるそうで、盲ろう者に対してはそれを緩和してもらわないと事実上無理ではないでしょうか?

意識や心のバリアフリー: これは、振動を利用できれば電信の世界では、そもそも相手が盲であるかも聾であるかも「わからない」ことから100%バリアフリーであると言えます。 ですから該当しません。

法制度上のバリアフリー: たいがい、こういうところにトラップがあったりします。 日本無線協会の、日本無線協会は東京に、かたや盲ろう者は全国各地に居ます。 受験勉強は日本点字図書館からテキストを貸し出してもらえばできそうですが、試験を受けに東京に行くのは介助通訳者の手配や宿泊など、盲ろう者には大きな負担です。 そうして考えてみると最も現実的なのは、「養成課程講習会としての認定を受けたVECによる出前講習」です。 点字図書館のテキストなどを併用して、近い将来自分でできないかなー?と半ば本気で考えているところです。 総務省に聞くと、養成課程講習会は毎年一定数の受講者が利用することが認定継続の条件になっているようで、そちらも何とかしてもらわないと実現できないですね。 そう毎年何十人も従事者資格の受験希望者が居るとは思えませんから・・・。

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