2022年も松が明けて大寒となりました。
さて・・・日の短い冬の間は、寒いけれど夜が長い・・・ ということで、
夜はローバンドが賑わっています。
一応現用の釣り竿バーチカルで1.8MHzにも出られるのですが、
もう少しするとKCJトップバンドコンテスト(1.8MHz帯)が開催されるので、
それに合わせてもう少し現用のバーチカルアンテナ(ATU併用)の放射効率を上げたい・・・と思い、
このアンテナのローディングコイルを、もう少し大きいものに替えることにします。
とはいえ、釣り竿アンテナですから、実際はアンテナ全体を新調します。
最近、長尺の振り出しグラス竿(しかも釣り糸ガイドのない「延べ竿」)はめっきり少なくなりました。
上州屋やタックルベリーなどの専門店に行っても必ずしもあるとは限りません。
今回は立川の上州屋でようやく実長4.5mのを入手しました。
-・・・-
■コイル部の製作■
まずコイルを作ります。
構造や仕様は現用と同じで、釣り竿にエレメントを螺旋状に巻き付けて、中間部にコイルを入れ、
全体を腐食防止とステルス化を兼ねて、パーツ毎に熱収縮チューブ(スミチューブ)で被覆しています。
アンテナの全長を変えず(むしろやや短くなってしまう)、電気的に長くするわけですから当然このコイルが大きくなります。
現用のバーチカルは銅線で巻きましたが、その重さざっと80g。 もし今回同じ線材で巻いたら200グラム以上になってしまいます。
そこで今回は、この間スリムヘンテナで使ったアルミパイプの3mmΦ(t=0.5mm)を茶筒に巻き、
3方向に穴明けアクリル板をスペーサーでかまして、往年の「エアーダックスコイル」風にしてみます。(※1)
コイルにも細径のスミチューブを被せます。(これが結構めんどうです)
コイル材のアルミパイプ3Φは1m長ですから継ぐ必要があります。
初めはぴったりパイプに入る2Φの銅線を中に入れ圧着器でカシメればいいと思っていましたが、
実際にやってみると、密実な銅線に被覆のアルミが完全に負けてしまって、どうもしっくり接続できません。
そこで、芯材を2Φの銅線から2Φの銅パイプにしてみました。
さすがにこれはホームセンターには品揃えは無く、秋葉原ラジオセンター2階のエスエス無線まで入って入手しました。
でも程よく一緒にツブれてくれていいあんばいに圧着されているようです。は
さらに当局の「ステルス仕様」は、コイルの線を熱収縮チューブで被覆するため、
①1mのアルミパイプに1mの熱収縮チューブをかぶせ、
②収縮させる前に茶筒にパイプを巻いて整形し、
③次のアルミパイプを銅パイプを内側に介して圧着接合し、
④最初のチューブを加熱収縮し、①へ戻る
この繰り返しを7回(つまりコイルの全長は7m)繰り返します。
でも最初の3本は、③→②→①→④の順にしてしまい(つまり3mのアルミパイプをつくって、それを茶筒に巻いてコイル状にしてから、熱収縮チューブをぐるぐる被せて入れた)、摩擦の多いチューブをひたすらシゴいたため、指の皮にマメができてしまいました。
かと言って収縮させてから巻くと、戻りが多くなり所定の径になかなかなってくれません。
次はアクリル板でコイルのブラケット兼スペーサーを作ります。 ブラケットはまずアクリル板をホットガンでヘアピン形に曲げます
もう1回ヘアピン部分をあぶって釣り竿ぐらいの径の金属に当てて
120°ぐらいに整形して出来上り。 穴が開いていますが特に意味は無し。
コイルのスペーサーはまず穴明してから切断します。 (逆だと穴が割れる)
頑張ってスペーサーをコイルに通して・・・
ブラケットと一体化してコイルは完成。
これで量ったところ、コイルの重量は今より軽い73gでした。
インダクタンスは計測していませんが、どうせエレメントがヘリカルになるので
コイルのインダクタンスを測ったところで共振周波数を予測してもさらにずれるので止めときます。
ただ、見るからに風圧を受けそうなので、コイルの位置は少し下げ目にして再計算しました。
釣り竿の所定の位置に納まるように、銅板で輪っかのターミナルを作っておき
あとでエレメントを接続して半田で固めます。
-・・・-
次はエレメントです。
現用と同じく、平打ちの編組線を釣り竿に巻いて凹凸を少なくします。
HF帯なのであまり表皮効果はありませんが、薄い方が少しでも被せるスミチューブが小径で済みます。
実はこのアンテナ、一番高い部品はグラス竿(2500円)と思いきや、実はスミチューブ(3000円)でありました。
製作総工費は・・・・アクリル板まで入れたら7500円ぐらいだったでしょうか。
上からこれまた熱収縮チューブを被せて仕上げます。
また計算では釣り竿本体部分にヘリカル巻きした効果は無視していますが、巻いた線長だけは計測しておき、
裸での同調周波数と、ATUが嫌う(インピーダンス無限大)周波数はチェックしておきました。
今までの製作データを新旧比較するとこんな感じです。
アンテナ取り替えの際にアナライザーで計測した数値も並べてみました。
現用(2015年製作)の
釣竿バーチカル
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今回(2022年1月)
製作した釣竿バーチカル
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全長 |
5.0m
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4.5m
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エレメント |
2.0m㎡
平打ち編組線
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1.35m㎡
平打ち編組線
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エレメントの取付形状 |
軽くヘリカル巻き
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普通にヘリカル巻き
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短縮コイル径(cm) |
6cm
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11cm
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短縮コイル長(cm) |
17cm
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20cm
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短縮コイル巻数 |
15回
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20回
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短縮コイル材 |
2mmΦ銅線
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3mmΦアルミパイプ
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短縮コイルの位置 (釣り竿末口から) |
3.8m
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2.0m
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短縮コイル インダクタンス計算値 |
4.1μH
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19.2μH
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アンテナ同調周波数 設計値(※2) |
11.7MHz
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6.4MHz
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インピーダンス無限大 になる周波数 |
13.0MHz
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12.4MHz
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この計算は、『アンテナ・ハンドブック』(CQ出版刊) の付録「センターローディング・
トップローディングアンテナのローディングリアクタンスの求め方」に準拠しエクセル表計算しました。
ステイホームでの製作はここまでです。
(※)エアーダックスコイル: 1970年代ごろ、秋葉原のトヨムラ電気が代理店で販売していた空芯コイルのシリーズ。
各種雑誌の製作記事にも多く用いられ、「#301016」(D=30mm、 線径=1.0mm、巻線ピッチ=1.6mm)
は中学生の頃、BCL用のアンテナカップラーなどでよくお世話になりました。
→HFバーチカルアンテナのローディングコイル改造(その2)へつづく
→由木東空中線研究所 目次へ戻る