L’hotel des Invalides  (廃兵院~ 「衛星バスケット」の製作)


ふだんはまず見ていないNHKの大河ドラマ。 
でも珍しいことに今年2021年のの『青天を衝け』は、毎回見ていたりします。
その中で渋沢栄一がパリの「アンバリッド」を訪れ感激するシーンがありました。

ここは今でもパリの観光名所で、正面にかかる「アレクサンドル3世橋」とあわせて、昼夜を問わず
最もパリらしさを感じさせる、フォトジェニックな場所です



L’hotel des Invalides (フランス語読みだと「ロテルデザンバリド」)というのは、そのまま訳すと
「活躍できなくなった者(ここでは兵士たち)を住まわせる(ここでは公費で)場所」ということになります。


・・・ぜんぜん無線と関係ありませんねぇ・・・・


でも、今日作る「衛星通信バスケット」は、いろいろ理由があってリタイアしてしまった無線設備たちに、
居場所を・・・それも、まだそれぞれができる範囲で、活躍の場をつくろう、というものです。
No One Left Behind、
「由木東サテライト廃兵院」では、誰一人取り残されることなく、活躍の場を得ることができるのでしょうか・・・・?


(あれ? ちっとも空中線と関係ないんだけど・・・まあよし)


【兵士・その1】



中古で買ったFT-817。 
その頃、山にもっていって電波を出そう、とちょっと考えていたのと、
割安感があったので半分衝動買いだったと思います。
(FT-817NDが普及し、そろそろ818が出るといった頃で、けっこう出回っていました)


ところが、ある日突然パワーがほとんど出なくなってしまいました。 わずかにパワー計の針の太さぐらい動く・・・
ということは・・・終段の石が飛んでしまったようです。


「FT-817」でググってみたら・・・英語圏ですが、
「私も『Blown Finals Club』に入会しました」という記事がいくつもヒットしました。

「ファイナル飛ばした倶楽部」・・・・
・・・どうやらこれ、「地域クラブ」ではなさそうですね・・・私も自動的に入会です。

なんでも、ファイナルの2SK2975はVdsが30Vで低目だから、静電気とかサージですぐ逝ってしまうんだとか・・・


メーカーに修理見積もってもらっても3万近くとのこと。 買い値とそう変わらん・・・。 
自分でファイナル取り換えるのもチョット熟練が必要で無理そう・・・(ホットガンとかクラッド抵抗とか・・・)

というわけで、廃兵となった彼はそのまま数年、箱の中で眠っていました。


【兵士・その2】

廃兵1のFT-817のバディになるのは、前出のIC-706mk2G。 
かつて南洋のIOTA戦線で活躍していました・・・・。

西はインド洋のモルジブ(8Q)から東はマニヒ環礁(FO)まで、島々を転々とした海の男、
写真でも少し白くなってしまっています。 (・・・・それは露出の関係でしょ)



ただしこれは老兵とはいえ100W機でJARDの保証もとり直し、現在は固定局のラインナップでもあります。
ホーム固定での運用なら問題ありませんが、アウェイ(移動運用)はできません・・・・。
 
まあその時は、50W出力の現役後輩、IC-7100と組んでもらうことにします。
大きさもだいたい同じなので好都合です。


【兵士・その3】

主戦力ではありませんが、2台の電鍵に次いで最古参、
おそらく当家で30年近く働いたヘッドホン、KenwoodのHS-6。 

リグの小型化が進み6.5Φモノラルプラグに合う相手がなかなかおらず、また新モードのFT8などはAF信号のくせに
モニタ要らずときており、最近は出番もあまり多くありませんでした。

HFメイン機が交替し、IC-7610になって引き続き活躍できるか・・・という淡い期待も束の間、
購入店のポイントがついたので、薄情な持ち主に上位モデルのHS-5を買われてしまい、とうとう戦力外になってしまいました。

それでも夜中や早朝のHFに出たりしても、家族の不興を買うこともなく平穏に無線ができたのはコレのおかげです。



イヤーパッドがぼろぼろでしたので、ネット通販で合成皮革のパッドに交換し、プラグも秋葉原の千石電商の2階、
エレキギター売り場にあったL型のミニプラグ(けっこう値は張った・・・)に付け替えました。


【ヘルパーさん】

FT-817、送信は残念ながらできない身になってしまいましたが、
受信はソコソコよく聞こえます。 それほどIC7100にもひけをとりません。

ここはひとつ、地元(たぶんここから一番近い無線機店)のコスモウェーブさんから、衛星のB/J両モード用に
144MHzと430MHzのプリアンプを取り寄せ、817のアタマに搭載して、
受信能力だけは秀でたものにしてあげましょう。



非常にコンパクトにまとまった基板だったので、まとめて一つのアルミの箱に両方をいれてみました。 
切り替えるのは電源だけです。


【ヘルパーさんのヘルパーさん】

いちいち2台のヘルパーさん(プリアンプ)を、やってくる衛星(ダウンリンクBモード=144MHz、Jモード=430MHz)
によってとっかえひっかえするのは面倒なので、デュープレクサを使ってFT817に同時接続します。 

ところが現在市販されているデュープレクサMX-72Nの同軸ケーブルは5D-FB相当の太物。 
とてもバスケットの底で取り回しのできるシロモノではありません。(写真)

 ←こちらは市販されているMX-72N


そこでヤフオクで旧式のDIAMOND MX-72Hを探して(細めのRG-58U)落札しました。
どこぞでしっかり働いてきたと見えて使用感アリアリでしたが、性能は問題なさそうです。


小回りの利く細径のRG-58/Uに付いていたM形プラグを外して
SMAプラグに付け替え、プリアンプに直結できるようにしました。 (下の写真)

外した2コのM形プラグはジャンパケーブルに仕立てて、FT-817との接続用に使います。

 ←今回使ったMX-72H




【ハコもの】

本家パリのアンバリッドは写真のようにキンキラキンですが、今回その必要はまったくないので、Seriaのカゴにします。 



大きさが同じで深さが違うケース2つです。 
2人の廃兵さんは背丈が違うので、これを重ねて二重底にします。
ついでにストラップも買っておきました。




現物合わせでいろいろカッターナイフを使って穴を開けます。




穴だらけになってしまったので、補強のためアルミテープを両面から貼ります。
中央の白いのはABSパイプの切れ端。 リグ2台の仕切りです。




プリアンプの性能を確認するため、受信系だけカゴに入れて聞いてみました。

明らかにIC7100のプリアンプON時よりS/N比は高く、地上2mのGPアンテナでも、
AOS直後からLOS直前まで、サテライトのビーコンは明瞭に聞こえます。 
これで耳は一番良くなりました。




下層の浅型のカゴは、通常設置した場合にリグ背面で交錯するいろんなケーブルが収まる、
「廃兵院のパイプシャフト(PS)」です。 
こうしておけば立てて置けるので、車載でも使えます。



IC-706を下段に入れれば、衛星バスケットのホーム仕様が完成です。
IC-7100を入れればアウェー仕様(=移動用)です。


ところでこのIC-706mk2G、実質144MHzと430MHz帯しか用していません。
両バンドの出力は50W/20Wですから、50MHz以下のバンドを指定事項から除外して、
144・430MHz専用機とすれば、技適保証は受けているので、移動局としても使えるのでしょうか?

たとえば14MHzが出る技適機種でも、3・4アマは14MHzを外して技適機種として申請できます。
それと同じで、100Wが出るバンド(=50MHz以下)を申請から外せば技適機種として通るのでは・・・
と思うのですが・・・? (誰か教えて~!)

         -・・・-
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いずれにしろこのIC-706mk2G、廃兵でもない現役なのに、この廃兵院に入れてもらっています。

・・・でもそういえば、本家パリのアンバリッドにも、廃兵でも何でもないナポレオンの棺があったりします。

「島流し」に遭った者の特権でしょうか? 思わぬところに共通点がありました。


今のところ家からしか使っていないので、FT-817のみの入居ですが、
耳がいいのでもっぱらサテライト用にはこちらを使っています。


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